リレーエッセイ4月
江津湖と犬の散歩 古﨑喜代子
我が家は大変恵まれたことに上江津湖の湖畔に位置する。2022年4月に住み慣れた家を息子夫婦に託して、隣のアパートを改修し終の棲家とする決心で、2LDKに引っ越しをした。狭くはなったが3階になった分、江津湖の眺めは絶景で、引っ越しは大変だったが、この場所で老後を過ごせる選択は正しかったと納得した。
引っ越し後、夫は老後設計の中で心に決めていたことがあったようで、その計画を着実に実行していった。その計画は大型犬を飼うことで、しかも白いラブラドールで女の子という条件が付いていた。ペットショップに注文するも中々見つからず,我が終の棲家に大型犬がやってきたのは、引っ越して1年後の2023年5月だった。名前はラムちゃんと名付け、狭い我が家の1部屋が彼女に占有され、生活の方も一変した。仕事柄、朝が早いので夫は5時に起きてラムちゃんの世話と散歩が日課になった。しかも、この場所に住んでいるということは、犬の散歩に最高なのだ。
毎朝たくさんの愛犬家が、自慢の犬を江津湖まで遠い所や車で連れてきて散歩させている中、我が家は目の前が江津湖なのだ。2階の住人の方は神戸から熊本のこの地が気に入って「ここはワンちゃんの天国ですね」と愛犬と一緒に移住してこられたくらいなのだ。
そのラムちゃんも1歳を過ぎたが、やんちゃ盛りで大変だ。いつになったら、盲導犬のようなお利口なラブラドールになるのやら、想像もつかない程いたずら盛りである。
さて、私の毎日はといえば、会社に行けばアッという間に1日が過ぎ、仕事以外の社会活動も責任のある役職が増え、日々の課題を解決することで精一杯の日々だ。その様な日々の中で、折れそうな心を支えてくれるのは、何気ない日常である。江津湖を犬と夫と散歩すること、家族との時間、友人とのおしゃべり等、この日常に、この風景と共に暮らせる幸せに感謝する毎日である。
そして、年と共に背中の荷物を少しずつ減らしてギアチェンジしなければと思いながらも、人の役に立てることや社会に貢献できることはライフワークとして続けたいと思う自分がいる。