リレーエッセイ9月

ベルリンの幼稚園    出田千世

孫が通う幼稚園は、朝9時に皆んなで食べる朝食から始まる。
各家庭からのお弁当だが簡単なもので良い。パンにハム、それにフルーツくらい。
数ヶ月に一度の金曜日には家庭ごとに全員の朝食をまかなう順番が回ってくる。
10人ほどのクラスでも当番が来ると大変ではある。子供達は今日は誰の家からの朝ごはん?!と話題にする為、少々奮発したりもする。

幼稚園は隣の大きな古い教会が管理しているようで荘厳な鐘の音が静かな住宅街に鳴り響き、野生のリスがマロニエの並木を枝から枝に飛び移る日常は贅沢な環境に思える。

2~3歳児のクラスは3人の保育士と共に生活の基本を学び園庭で遊んで支給された昼食を食べ、お昼寝して親の迎えを待つ。流れとしては日本と変わらないが違うところは保育室にピアノやオルガンがないところだろうか。
しかし歌はよく歌っているし手遊びやゲームも覚えて帰る。
運動会もマーチングもお遊戯会もないがドイツの伝統的な復活祭やクリスマスなどの行事は大切にしていて、それにまつわる微笑ましい工作や絵は自宅のリビングの壁を飾っている。

誕生日は祝ってもらうのではなく本人が皆に振る舞うのが習慣のドイツでは子供の誕生日にも親がケーキを用意して幼稚園に持って行く。
孫は牛乳と卵のアレルギーの為、普段ケーキは食べられないのだが本人の誕生日とあっては何とかしなくては!と両親がケーキ職人を探して豆乳を使ったデコレーションケーキを作ってもらった。
健康志向のドイツでは豆腐や豆乳が人気で助かった。

穏やかな時間の流れの中で育っていく孫を見ていると日本を振り返ることが度々ある。
9月からは新しい上のクラス。
またどんな新鮮なビックリが待っているのか楽しみである。