リレーエッセイ6月

花のように    宮原由花

 春の生まれで、しかも名前に花という文字が付いている私は、昔から花が好きだった。
私は父の病院で大学卒業以来ずっと働いてきた。結婚し子供ができてからも仕事柄、帰りが遅く、加えて13年前、私が病気になり、主人や当時幼かった子供達につらい思いをさせてしまった。その頃から玄関や庭に花を植え出した。幼い子供達が先に帰ってきた時に少しでも寂しくないようにとの思いだった。
 これまでいろいろな花々が我が家を飾った。(ただ決して行き届く世話をしているということではない)月日は流れ、たくさんの思い出と共に子供達も成長した。家にはいつも何かの花が咲いていた。
 3年前の熊本地震では本震後、家族で病院に向かい、入院者のライフラインの確保に奔走した。10日程経って、初めて自宅に戻った。被害の様子にあらためて驚いた。家に入り雨戸を開けた。その時の光景を忘れない。覚悟して開けた雨戸からふりそそぐ日差しの先に地震前に固いつぼみだったクレマチスがしっかり花を咲かせていた。はっとするような白さだった。地震後、全く手つかずだった庭にしっかりと咲いていた。思わずわーっと歓声を上げた。心が満たされた。家主が居ない中、クレマチスもがんばっていたんだと。くたくたに疲れていた心が癒され、たくさんの元気をもらった。
 それからだろうか。ますます花が大好きになった。花の力、いや、花だけでない、植物・自然・芸術・スポーツ・その他・・・それらの持つ力は限りなくすばらしい。ふと立ち止まる時に私達は、それらのものに癒され元気をもらって、またがんばろうと歩き出す。
 私もそうなれたらいいな。例えば花のように、誰かに癒しや元気を与えることができる人になれたらいいな。・・・もちろん、自分なりにだけど(笑)
 そんなことをふと思いながら、庭の花々に水やりをするある日の私であった。