リレーエッセイ1月

私の鍋つかみ  山部見季

 結婚したてのころ、いつも可愛いがっていただいていたお茶のお稽古の先輩が、結婚祝いに「道明の帯締め」と「小さい鍋つかみ」をくださいました。その時の様子は今でも覚えています。包みからして上等な帯締めはまるでおまけのような扱いで、「この鍋つかみは本当に素晴らしいのよ!!」とかわいいラッピングをご自分でさっさと開けてしまわれ、「こうやって使うのよ」と鍋の柄のつかみ方や、天板の持ち方を身振り手振りで「実演」してくださいました。私はというと、先輩の鍋つかみ愛に圧倒されながらも、ありがたくいただきました。
 これが私の鍋つかみとの出会いです!
それから、日々のお料理にその小さい鍋つかみは、なくてはならない存在になりました。
琺瑯の鍋の柄、炊飯器の内釜、オーブンの天板、小さい鍋つかみは、私の手を熱々の道具から守ってくれます。場所を取ることも、手にはめる煩わしさもなし、使っては冷蔵庫のドアのフックにかけ、繰り返したった一組の鍋つかみを使い続けていました。けれども、そのうち少し燃やしてしまい破れ、だんだんボロボロになってしまったのです。
 ほんとうによく使っていましたから、自分で縫ってみようと思い、ひとつを解いてみました。真似をしてミシンで縫おうとしたのですが、分厚く針が折れ結局できませんでした。破れた鍋つかみのひとつは解いてしまったし、仕方なく片方だけを使い続けていました。もちろん、それでは十分には役に立ちません。
 その頃、エプロン作家の方と出会い、解いてしまった鍋つかみを見せ作っていただけないかお願いしてみました。そうすると、すごく興味を持たれ、可愛らしい生地でたくさん作ってくださったのです。少し形も変えて垢抜けた印象になりましたが、北欧の生地しか使わないとおっしゃり、私のボロボロになった鍋つかみのようなキルティングの生地は使ってはもらえませんでした。そうするとどうしても、オーブンの天板を持つほどの厚さはなく、私の理想の鍋つかみの再現とはなりませんでした。
 ほどなく、私が布地を買い縫製だけをお願いできる方と出会いましたが、できあがった物は、20組一つ一つ大きさが微妙に違い残念ながら満足できませんでした。それでも熱い道具をつかむことはできたので、この3代目を長く使うことになります。
 そんななか、昨年あるソーイングの先生と知り合うことができました。ふとしたきっかけから、なんと鍋つかみを作っていただけることになったのです。嬉しいことにオリジナルのタグも付けてくださり、私の理想の鍋つかみが完成しました。キルティングの生地にオリジナルのタグそして、掛けるためのリボン、キレイな縫製、なんでも揃ったので、欲しい方にはお分け出来るようになりました。
 2021年秋、SI熊本-すみれクラブ内バザーのテーマは手作りフェア!私は鍋つかみを出品することにしました。はじめの12組はあっという間に売り切れ、追加の9組も完売になりました。私が愛してやまない鍋つかみを、クラブの皆様にも使っていただけることになるなんて、本当に感激です。皆様のお家のキッチンでもご愛用いただけますように!