リレーエッセイ 10月

夏の思い出   岡村仁美

この夏、歳老いた母と孫と一緒に過ごす事が出来た。
地震後、一人暮らしをしている母の所に行く度、物忘れが多くなり心配していたので夏休みは孫と一緒に実家で過ごす事にした。5人の孫の内、二人は受験生、全員揃う事は余りないが、塾の送迎やお昼ご飯の準備など子供達と一緒に居る時間は楽しい!
何より母がシャキっとして料理の腕を見せてくれるのに驚いた。
頑固な父に使え料理の腕を上げて来た母の人生、父を亡くし「こんなに楽して良いのだろうか?」が口癖で父の亡き後も孫や子の為に鍋いっぱいの手料理をタッパーに詰めて嫁さん達に持たせてくれる。
それは昔から、私が仕事ばかりで手の込んだ料理が出来ず、子供達の食事を心配した母が、毎日手料理を届けてくれた事からずーと続いている。
孫たちも「大ばあちゃんの料理が一番美味しい!」とレストランに行くより喜ぶので母も生き甲斐になっているようだ。
 地震で市内に引っ越した私はなかなか口に入ら無くなってしまったが、久しぶりに母と一緒に台所に立ち、料理をしながら会話をするのが、何よりの時間となった。
宿題が終わると子供達が「手伝う~!」と台所が賑やかになり、何でも遊びにしてしまう天才だ。
しかしそこで喧嘩が始まり、誰かが泣き出す。これが問題だ!
怒ると「お婆ちゃん嫌い!」と言われるので宿題してなくても怒らない事にした。
それでも長い夏休みに退屈する孫達を映画に連れて行ったり、ひまわり迷路等情報誌で探してお出かけ、昨年西瓜割りした種から芽が出て庭に西瓜が生った、収穫時期が分からず大きくなるのを待っていたら雨が降り続き駄目になってしまったが、残った小玉の西瓜を割ってみたら結構甘くて美味しく食べられた。みんな大喜びで来年用にと種を口から飛ばす子供たち。
こうして楽しい日々が過ぎて行った。

蜩が鳴き子供の声が聞こえなくなった実家は部屋いっぱいに占領されていた玩具が寂しそうに箱の中に収まっていた。