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リレーエッセイ 7月 essay

人形(アンティークドール)とふれあう至福のとき           米澤静江


 私がいま夢中になっている人形との出会いは15年前のことでした。人形と花が大好きという友人から、人形作りの先生を紹介されたことが始まりでした。
 先生に師事して作り始めた人形は「アンティークビスクドール」と呼ばれ、19世紀ヨーロッパの貴婦人・令嬢の間で流行したものです。小さなものは5センチ、大きなものは70センチほどの人形を現代の感覚ですべて手作りします。
 日々、仕事をこなしながら慌ただしく過ごしていく中で、ほっとする時間があるとしたら私にとっては、この人形たちに向かい合うわずかな時間なのです。或る時「細かく手間ひまがかかり、大変そうですね。」と言われたこともありますが、考えてみるとその手間をかけて創作している時間が私にとっては、楽しく、自然体の自分を取り戻すひと時なのです。人形ができるまでの一連の仕事と、人形が出来上がった時のことを想像すると、嬉しくてワクワクもしますが、反面、顔に細い筆でまつ毛や眉を一筆一筆書き入れる時は緊張もします。
 皆さん驚かれますが人形作りはすべて手作りです。顔とボディは陶土を焼いて成形します。表面を磨いてから顔に目を入れ化粧をして鬘(かつら)を付け、ボディと組み合わせます。次に下着を作って、かわいいドレス、靴や装飾品、帽子も作ります。出来上がるまでは半年程の時間を要します。時間がある時は夜中から明け方まで時間を忘れて人形作りに集中していることがあります。そんなときは、疲れより制作を通して人形と触れ合うことによって満ち足りた気持ちがあふれます。また、先生から中世ヨーロッパで作られた人形の歴史と暮らしの中の人形の役割などを教えていただくと、さまざまな思いが浮かび人形作りの奥深さを改めて感じることがあります。
 仕上げた人形を教室でともに習っている生徒の皆さんと合同で展示する時、その作品の一点一点に込められたドラマを読み取り、感動を味わうことができます。人形を通して人と触れ合える幸福に感謝する瞬間です。
 ところで、今年小学1年生になった孫娘は、制作途中の人形に布やレースリボンでピン付けをしたり楽しんでいます。人形の髪をチョッキンと切られてあわてたこともありましたが、子どもなりの表現と感性にこちらも驚かされております。人形制作を通して思いがけず孫との時間を共有することになり新たな楽しみのひとつになりました。あわただし日々の暮らしですが、これからも人形と過ごす幸せなひと時を大切にしていきたいと思う今日この頃です。
        




 国際ソロプチミスト熊本−すみれ

<例会日>
 毎月第3木曜日 午前10時〜
<例会場>
 ANAクラウンプラザホテル
     熊本ニュースカイ

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