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リレーエッセイ 8月 essay

馬に魅せられて                         永島 静子 


 今年の干支は午年「馬」。私の大好きな動物のひとつで、長くお付き合いをさせてもらっている。今年1月に「国際ソロプチミスト熊本−すみれ」に入会させていただいた私は、入会の年の干支が馬なので、佳い縁を結んでくれたような感じがして、ひとり喜んでいる。

 馬と私の関わりは幼少時代からあるのだが、馬が特別な存在になったのは熊本に住むようになってから。昭和51年、夫の転勤で熊本に来た。親戚も知人もない見知らぬ土地で、最初は寂しさ、不安もあったが、「乗馬を始めよう!」という夫の一声で、休日は家族揃って乗馬クラブに行っていた。やさしい眼をした馬達を見て子供達は大興奮。エサを与えたり、触れたりしてすっかり仲良くなっていく。前任の福岡にいた頃から、夫はブリティッシュの乗馬クラブに通っていて、乗馬姿も様になっている。馬場内を颯爽と走っている人馬一体。「かっこイイ。私も乗りたい!」

 誰でも簡単にできると思っていた乗馬。しかし初心者の私は馬とのコミュニケーションが上手くいかず、最初は乗馬を楽しむどころではなかった。「馬は人を見る」というが、世話をする人、自分をわかってくれる人をよく知っており、私の合図ではびくとも動かないのにインストラクターの小さな舌打ち「チョッ・チョッ」という音には反応する。馬には馬鹿にされ、肩・腰のコリと、太股の痛みで、体はガタガタ。私はあせるばかりで、脂汗と疲れの連続。毎週日曜日、1時間程度の練習が何鞍続いただろう。こんな格闘を繰り返すうちに少しずつ慣れ、ちょっとした動きで馬の反応がわかるようになってきた。気持ちが通じたような気がして嬉しくなり、馬の首すじを撫でる。騎乗後は、馬を水で洗ってやる。ブラシをかけ、布で水をふきとる。馬の眼がやさしくおだやかになる。こうして馬の接し方や扱い方に少しだけ自信が持てるようになった頃、育児や夫の起業などで忙しくなり、乗馬どころでない日々が続いた。でもやっぱり馬が恋しい。

 ようやく育児も会社も落ち着き、「又、乗馬を始めよう!」。今度は阿蘇のカントリースタイルの乗馬クラブに二人で入会した。阿蘇の自然、四季折々の景色を楽しみながら馬仲間達と一緒に駆け廻ることのできる乗馬を満喫している。野焼きの後の黒い土ぼこり。緑の芽が吹き、春りんどうやすみれ、黄色いカタバミが咲き出す春。やがてかやの葉が青々と茂り、真夏の太陽がぎんぎんと照りつける。秋になると背丈まで伸びたすすきの中をかきわけて走り廻る。冬は真白に積もった一面の銀世界。馬の足跡だけが残る。白い空気の中に馬の吐く息、私達の吐く息が解け合う。遠くに見える九重連山、阿蘇五岳がまぶしい。

 馬と一緒に駆ける。馬に出会うことができたおかげで豊かな人生を過ごす事ができ、最高に感謝している。最近は孫達が私達の乗馬につき合うようになり、一緒にのんびり野原を歩くようになった。まだ一人で騎乗できない小さな孫と二人乗り、ポッコポッコとリズミカルに歩む馬の背で眠ってしまったり、そんなのどかな日もあったりして。夫婦共、老いてはきたがまだまだ道は続く。これからも馬を愛し、自然と親しみ、乗馬人生を楽しんで行こう。
        




 国際ソロプチミスト熊本−すみれ

<例会日>
 毎月第3木曜日 午前10時〜
<例会場>
 ANAクラウンプラザホテル
     熊本ニュースカイ

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